メーカーのホームページや通販サイトでレンズのラインナップを見ていると、同じぐらいの焦点距離のレンズなのに1〜2万円程度のものから数十万、百万という目玉が飛び出るほど高いものまでありますよね。高いレンズはキヤノンのLレンズや超望遠単焦点レンズだけでなく、ライカやツァイスといったブランドのレンズもそうです。
なんで同じような焦点距離なのに価格が10倍も違うんだよ!?と私も昔は思っていましたが、その理由を知ると納得なんです。今回は、どうしてレンズの価格にここまで開きがあるのか解説したいと思います。
レンズについておさらい
写真好きの人はカメラ本体よりもレンズへのこだわりが断然強いです。写真は空間を切り取る芸術なので、その切り取る角度を決定する重要な要素だからです。
レンズを大きく分けると以下の3つになります。とはいってもこの分類はメーカーが決めているものではなく、レンズの価格や性能、ブランドなどで大まかに分類しているだけです(私の主観も入っています)。
- 初心者向け:価格は安いですが、開放絞り値が高く(暗く)なる傾向があります。キヤノンのEF50mm F1.8 II(生産終了)は1万円以下で手に入る「撒き餌レンズ」と呼ばれていますが、そのマウントのリングはコストを抑えるために金属ではなくプラスチック製なのは有名です。
- アマチュア向け:初心者向けとプロ向けの中間的存在。価格帯は5〜15万円ぐらい。例:キヤノン EF70-200mm f/4L IS USM
- プロ向け:価格は15万円以上で解像度、シャープさ、明るさ(F値)ともに最高レベルのレンズ。例:キヤノン EF70-200mm F2.8L IS II USM
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高価なレンズの特徴
素材と作りの丁寧度
何と言ってもこれ!作りの丁寧度が天と地ほど違うんですよ!上記の「エサ撒きレンズ」を始めとした安いレンズは機械が自動で生産されます。安いレンズは薄利多売なのでなるべくコストを抑えて大量に作ってなんぼです。そのため個体によってばらつきがあったり、プラスチックなどの安いレンズ素材ゆえに解像度が低かったり、周辺光量が少なかったり色収差が目立ったりします。また、レンズ1枚1枚精密に検査しているわけではないためレンズ内に気泡があっても見過ごされがちです。
それに対して高価なレンズは機械に加えて熟練した職人の手が加わります。レンズ1枚1枚精密に検査され、一切妥協がないんです。
レンズの内部にはいくつものレンズ群があります。レンズ一枚一枚は光の波長によって屈折率が違うのでそれを考慮した設計が求められます。
ここではレンズの製造現場の大変貴重な動画を紹介したいと思います。結構有名な(?)動画です。キヤノンの EF500mm F4L IS USMの製造工程です。
と、研磨は機械ですが、組み立ては人の手が加わっていることがわかります。さも安価なレンズもすべて人の手で丁寧に作られているかのようですが、残念ながら上で言ったようにそうではありません。
解像度(シャープネス)
高価なレンズは作りの丁寧さと設計の良いおかげで解像度がピカイチなんです!開放から、中心から周辺に至るまでキリッと解像します。安いレンズはF8ぐらいまで絞らないとなかなかシャープになりません。レンズの解像度比較に便利なのがThe Digital Picture.comです。レンズを選ぶ際の参考にしてみてください。
フレアの少なさ
太陽などの強い光が入ってしまうと下のようなふわっとした白い絞り環の形のが出てしまいます。レンズの中には「レンズ群」と呼ばれるいくつものレンズがあり、フレアは光がレンズ内で複雑に反射してしまうからです。高価なレンズは反射防止のコーティングが安価なレンズよりも強化されているのフレアが少ないです。
開放F値が小さい(明るい)
キヤノンのいちばん明るいレンズはEF50mm F1.2L USMでF1.2という驚異の明るさで、値段も「餌まきレンズ」の50mmよりも10倍ぐらいします。開放F値がF1.2とF4.0では雲泥の差です。3段も違うと例えばF4.0ではシャッタースピードが1/15だったのがF1.4まで開くことができると1/125まで速くすることができ、手持ちでもブレにくくなります。また、大口径で解放F値が低い(明るい)ため被写界深度が浅くなり前後にボケみが出ます。
手振れ補正
手ぶれ補正は望遠だけでなく標準レンズについているもので、価格とはあまり関係なさそうに見えますが少し関係あります。安価なレンズの手ぶれ補正は上下左右の普通のブレを軽減しますが、例えばEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMだと上下左右の手ぶれ補正に加えて流し撮りに対応した上下のブレを軽減する機能があります。
防塵・防滴
プロ向けの高価なレンズはチリ(埃)や湿気の多い場所での撮影も想定しているのでそうした環境に強い防塵防滴仕様なのが特徴です。防塵仕様じゃないカメラだと小さなチリが入ってしまいズームリングやフォーカスリングを回すと少しザラザラした嫌な感触がします。チリが入ってしまっても写りにはすぐ影響はありませんが中古で売る際に原点対象になります。
AF(オートフォーカス)
スナップ写真を撮るのに速いAFは必要ありませんが、スポーツ写真などの動きの速いものを撮るときに速いAFは必須です。AFの速さを決定するのはカメラではなくレンズのモーターで、高価なレンズには速いモーターが採用されています。一部望遠レンズには「撮影距離範囲の切り替え」が可能なものがあります。例えば遠くのものを撮るときに3m以内のモノにはピントを合わせたくないというときにこれを設定します。